
「新NISAを始めてから、スマホの画面を見るのが楽しみになった」という方は多いのではないでしょうか。
特に米国株や「オルカン(全世界株式)」に投資しているなら、画面には鮮やかなプラスの数字が並んでいるはずです。
しかし、その利益の正体を冷静に分析したことはありますか?
2026年4月現在、ドル円相場は159円台という歴史的な水準にあります。
この「円安」は、NISA投資家にとって追い風に見えて、実は非常に厄介な「毒」を含んでいます。
今回は、投資信託の基準価額が上がっている裏に隠された、新NISAにおける円安のデメリットについて、等身大の視点で紐解いていきましょう。
「高く買ってしまっている」という自覚なきコスト
新NISAの積立投資において、円安の最大のデメリットは「買付コストの上昇」です。
例えば、毎月5万円を米国株投信に積み立てているとしましょう。
1ドル130円の頃なら、5万円で約384ドル分の資産を買えていました
。しかし、159円の今、同じ5万円で買えるのは約314ドル分に過ぎません。
実に2割近くも、手に入る「口数」が減ってしまっているのです。
投資の鉄則は「安く買って高く売る」ことですが、今の私たちは、為替というフィルターを通すと「歴史的な高値で買い続けている」ことになります。
将来、もし為替が適正水準(例えば130円〜140円)に戻ったとき、この「割高で買った時期」の資産が重くのしかかってくる可能性があるのです。
「見せかけの利益」と購買力の低下
今のあなたのNISA口座の含み益、それは本当に「豊かさ」に直結しているでしょうか。
円安が進むと、海外資産の評価額は日本円ベースで膨らみます。
株価が変わらなくても、ドルが上がれば円建ての資産は増えるからです。
しかし、ここで忘れてはいけないのが、私たちが生活している日本での「購買力」です。
159円という円安は、輸入コストを押し上げ、電気代やガソリン代、食料品価格のさらなる高騰を招いています。
NISA口座で資産が10%増えたとしても、世の中の物価がそれ以上に上がっていたり、円の価値そのものが20%下がっていたりすれば、実質的なあなたの資産価値は「マイナス」です。
「数字は増えているのに、生活は一向に楽にならない」という違和感の正体は、この円安による購買力の相殺にあります。
私たちは増えた利益を喜ぶ前に、自分の持っている「円」という通貨が世界でどれだけ弱くなっているのかという現実に目を向けなければなりません。
「円高への揺り戻し」という爆弾を抱えるリスク
そして、最も警戒すべきは、いつか必ず訪れる「円安の終わり」です。
今は「160円を超えるのが当たり前」という空気感がありますが、為替は振り子のように動きます。
米国の利下げや日本政府による大規模な為替介入、あるいは世界的な景気後退が起きたとき、相場は一気に円高方向へ振れる可能性があります。
そのとき、何が起きるか。もし米国株価が変わらなくても、為替が159円から130円に戻るだけで、あなたの海外資産は約18%も目減りします。
もし「米国株の暴落」と「急激な円高」が同時に起きたら……。これは「ダブルパンチ」となって、NISAでコツコツ積み上げてきた利益を一瞬で吹き飛ばす破壊力を持っています。
「円安だから儲かっている」と浮かれている人ほど、この逆回転が始まったときの心理的なダメージに耐えられず、最悪のタイミングでNISAを解約(狼狽売り)してしまうのです。
私たちが今、取るべき「賢いマインドセット」
では、円安がデメリットだらけだからといって、新NISAを止めるべきでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
大切なのは、以下の3つの視点を持つことです。
- 「口数」を意識する: 円安で高く買っている時期は、買える口数が少なくなります。逆に言えば、将来円高になったときは「安くたくさん買えるチャンス」が来るということです。長期投資なら、この波を平均化する力(ドル・コスト平均法)を信じましょう。
- インフレ対策と割り切る: 円安はデメリットですが、もし投資をしていなければ、円安による物価高のダメージを「日本円の貯金」だけで受けることになります。NISAで外貨建て資産を持つことは、自分の資産を円沈没から守る「最低限の防衛策」だと捉えるべきです。
- FXなどで「通貨の保険」を検討する: 余剰資金があるなら、FXを使って「円高になったら利益が出る」ポジションを少しだけ持っておくなど、NISAの評価損をカバーする「ヘッジ」の考え方を学ぶのも一つの手です。
結論:数字に一喜一憂せず、構造を理解する
159円台の今、新NISAの「含み益」は非常に甘美な響きを持っています。
しかし、それは為替という魔法がかかった「幻」に近い部分があることも否定できません。
円安には、資産を膨らませる「光」の側面と、コストを上げリスクを溜め込む「影」の側面があります。
このデメリットを正しく理解し、浮かれすぎず、かといって恐れすぎず。
2026年後半という激動の時代を乗り切るためには、画面上の数字ではなく、その裏側にある「通貨の価値」を見極める冷静な目が必要です。
積立投資は、淡々と続けることに意味があります。
でも、その「淡々と」の中身に、少しだけの知恵と警戒心を忍ばせておきましょう。
それが、最後にはあなたの大切な資産を守る盾になるはずです。



コメント